システム開発やITの現場でよく耳にする言葉「ワークアラウンド(workaround)」。
なんとなく「一時しのぎの対処法」と理解している人も多いと思いますが、
- 実際にどういうときに使うのか?
- メリット・デメリットは?
というところまで説明できる人は、意外と少ないかもしれません。
この記事では『ワークアラウンド』について、以下の内容をわかりやすく解説します。
- ワークアラウンドとは?
- ワークアラウンドはどんなときに使うの?
- ワークアラウンドの具体例
- ワークアラウンドのメリット・デメリット
ワークアラウンドとは?
ワークアラウンド(workaround)は、問題の根本的な原因を解決せずに、一時的・回避的に問題を乗り越える方法です。
たとえば、問題が発生したものの、
- すぐに修正するには多くの時間やコストがかかる
- 技術的・仕様的な制約があって根本的な対応がすぐには難しい
といった理由で、すぐに根本的な解決策を講じることができないときに、「とりあえず使える状態にする」ための応急処置や回避策をとることがあります。これが「ワークアラウンド」です。
たとえて言うなら…
- 家のドアの取っ手が壊れて開かない。
- とりあえず窓から出入りすることで中に入る。
- アプリにバグがあって、いつものやり方だと動かない。
- 別の操作手順を使えば動くので、そっちで使うようにする。
ワークアラウンドはどんなときに使うの?
ワークアラウンドは、すぐに根本的な修正ができないときや、今すぐ業務を止めたくないときに使われます。よくある利用シーンとその理由を以下に示します。
使う場面 | 説明 |
---|---|
バグがあるが、修正には時間がかかる場合 | 修正には数日〜数週間かかる場合がある。すぐに機能を使えるようにするため、回避策を用意する。 |
外部サービスに制限がある場合 | APIの制限や仕様変更により、すぐに希望通りの処理ができない場合がある。そのため、別の方法で目的を達成する。 |
根本対応が困難な場合(費用・期間・技術的制約) | レガシーなコードや複雑な仕様のため、大規模な修正が必要である。時間もコストもかかるため、とりあえず回避する。 |
OSやブラウザなど環境依存の不具合の場合 | 環境によって不具合が起こるが、すべてに対応するのは難しい。一部ユーザーには限定的な対処を行う。 |
ワークアラウンドの具体例
実際にどのように使われるのか、よくあるパターンを3つ紹介します。
例①:印刷ボタンが効かないWebアプリ
あるWebアプリで「印刷ボタン」が反応しないバグが発生。
- 原因
- JavaScriptのバグ
- 修正には時間がかかる(再リリースやテストが必要)
- ワークアラウンド
- ユーザーに「Ctrl + P を押してください」と案内する
ポイント
- 印刷機能自体は使えるので、ボタンの修正を待たずに対応できる。
- 根本修正は後回しにしつつ、ユーザーの業務は止めない。
例②:ソフトが特定のOSで起動しない
Windowsのアップデートにより、ソフトが起動しなくなった。
- 原因
- OSの仕様変更との非互換性
- ソフト自体の修正には時間とコストがかかる
- ワークアラウンド
- ソフトを「管理者権限で起動」すれば問題なく動作する
ポイント
- すぐに全体の修正はできなくても、回避策を共有することで一時的に利用可能
例③:フォームに特定の文字を入力するとエラーになる
入力フォームで絵文字や特殊文字を入力すると、サーバー側でエラーになる。
- 原因
- データベース側のエンコーディング対応不足
- 修正するにはバックエンド側の対応が必要
- ワークアラウンド
- フロントエンド側で問題のある文字を入力できないように制限(バリデーション)
ポイント
- 根本原因(文字エンコード)には未対応だが、ユーザーに誤操作させない工夫で被害を防ぐ
ワークアラウンドのメリット・デメリット
ワークアラウンドのメリットとデメリットを以下に示します。
メリット
- すぐに対応できる
- 根本対応を待たずに業務を継続できる
- 影響を最小限に抑えられる
- ユーザーや業務への影響を一時的に回避
- 柔軟な対応が可能
- 技術的・運用的に現実的な手段を選べる
デメリット
- 根本的な解決になっていない
- 問題が残ったままになってしまう
- 将来的なリスクがある
- 後で再発したり、技術的負債になることも
- 対応が属人化しやすい
- 記録や共有がないと「なぜそうしているのか」が不明になる
本記事のまとめ
この記事では『ワークアラウンド』について、以下の内容を説明しました。
- ワークアラウンドとは?
- ワークアラウンドはどんなときに使うの?
- ワークアラウンドの具体例
- ワークアラウンドのメリット・デメリット
ワークアラウンドは、すぐに問題を解決できないときの一時的な回避策です。ただし、本当の解決ではないではないので、後で必ず正しく対応することが大切です。また、ワークアラウンドについて記録・共有しておくことで、後の混乱を防ぐことができます。
お読み頂きありがとうございました。