この記事ではReactの『{}構文』について、
- JSXの
{}構文とは - JSXの
{}構文の特徴 - JSXの
{}構文の注意点
などをサンプルコードを用いて分かりやすく説明するように心掛けています。ご参考になれば幸いです。
JSXの{}構文とは
JSXの{}構文を用いることで、任意のJavaScriptの式(変数、計算式、関数、メソッド)を直接コンポーネントの中に埋め込むことができます。
以下にJSXの{}構文を用いて変数を埋め込んだReactコンポーネントのサンプルコードを示しています。
function App() {
const name = 'Taro'; // 変数定義
return <h1>Hello, {name}!</h1>; // 変数を埋め込み
}
export default App;上記のサンプルコードでは、nameという変数が{}内に置かれ、<h1>タグの中で展開されています。これにより、ブラウザに表示される際にはHello, Taro!というテキストが出力されます。
同様に、以下にJSXの{}構文を使って演算子、計算式、メソッドを埋め込んだReactコンポーネントのサンプルコードを示しています。
function App() {
const age = 20;
// 関数の定義
function double(value) {
return value * 2;
}
// オブジェクトとメソッドの定義
const person = {
firstName: 'Taro',
lastName: 'Yamada',
fullName: function () {
return this.firstName + ' ' + this.lastName;
},
};
return (
<div>
{/* 計算式の埋め込み */}
<p>Next year, I will be {age + 1} years old.</p>
{/* 関数の埋め込み */}
<p>Twice my age is {double(age)}.</p>
{/* メソッドの埋め込み */}
<p>My full name is {person.fullName()}.</p>
</div>
);
}
export default App;上記のサンプルコードでは以下のことを行っています。
- 計算式の埋め込み
ageという変数に1を加算した計算式を埋め込んでいる。
- 関数の埋め込み
double関数を埋め込んでいる。
- メソッドの埋め込み
personオブジェクトに定義したfullNameメソッドを埋め込んでいる。
このようにJSXの中で{}構文を使うことで、直感的にJavaScriptのコードを埋め込んで、動的なコンテンツを作成できます。
補足
ES2015(ES6)から追加されたテンプレートリテラル(テンプレート文字列)と{}構文は別物なので注意してください。テンプレートリテラルに変数を埋め込む際には${...}を用います。
JSXの{}構文の特徴
JSXの{}構文の特徴を以下に示します。
{}構文では式はエスケープ処理されている{}構文では式はブール値、undefined、nullは出力されない
上記の特徴についてこれから説明します。
{}構文では式はエスケープ処理されている
JSXの{}構文を使用すると、その内部で記述されたJavaScript式は自動的にエスケープ処理されています。以下にサンプルコードを示します。
function App() {
const content = '<h1>Hello!</h1>';
return (
<>
{/* エスケープ処理されるので安全なコードです */}
<p>{content}</p>
</>
);
}
export default App;上記のサンプルコードでは、文字列contentに<と>という記号を用いていますが、Reactではこの文字列をJSXの{}構文に埋め込む際にエスケープ処理しています。エスケープ処理することによって、XSS(クロスサイトスクリプティング)攻撃などの脆弱性からアプリケーションを守っています。
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『エスケープ処理』とは、プログラミング言語やマークアップ言語で文字列を扱う際に、その言語によって特別な意味を持つ文字や記号(特殊文字)を通常の文字として扱うための処理、または逆に通常の文字を特別な意味を持つものとして扱うための処理のことです。
例えば、HTMLではタグの記述に<と>という記号を使用します。これらの記号を文字列で使うと、Webブラウザはタグの記述であるとみなすため、表示することができません。そこで、これらの記号を表示する際には、<は;<に、>は;>に置き換えられています。この処理をエスケープ処理といいます。
『エスケープ処理』については下記の記事で詳しく説明しています。興味のある方は下記のリンクからぜひチェックをしてみてください。 続きを見る
エスケープ処理とは?HTML・JavaScript・URLの例でわかりやすく解説!
ただし、dangerouslySetInnerHTML属性の__htmlキーで指定された場合には、エスケープ処理が適用されないので注意してください。この属性はその名の通り「dangerously」な(危険な)操作であり、使用時には十分な注意が必要です。以下にサンプルコードを示します。
function App() {
const content = '<h1>Hello!</h1>';
return (
<>
{/* エスケープ処理されないので注意してください */}
<p dangerouslySetInnerHTML={{ __html: content }}></p>
</>
);
}
export default App;上記のサンプルコードでは、content内のHTMLはエスケープ処理されずに直接DOMに挿入されるため、XSS攻撃に対して脆弱になる可能性があります。
dangerouslySetInnerHTML属性の__htmlキーで指定した文字列は、エスケープされずそのままHTMLとして埋め込まれます。イメージとしては、JSXの{}構文で文字を表示する場合はJavaScriptのtextContentプロパティ(テキストとして扱う)を使っているのに対し、dangerouslySetInnerHTML属性はinnerHTMLプロパティィ(HTMLとして解釈・挿入する)を使ってHTMLを直接挿入しているようなものです。
{}構文では式はブール値、undefined、nullは出力されない
JSXの{}構文では、ブール値(trueやfalse)、undefined、nullは無視されて出力されない点に注意してください。
例えば、以下のサンプルコードでは{0}を除いて何も表示されません(各<p>タグ内は完全に空になります)。
function App() {
return (
<>
{/* trueは表示されない */}
<p>{true}</p>
{/* falseは表示されない */}
<p>{false}</p>
{/* undefinedは表示されない */}
<p>{undefined}</p>
{/* nullは表示されない */}
<p>{null}</p>
{/* 0は表示される */}
<p>{0}</p>
</>
);
}
export default App;これらの表示したい場合には、以下のサンプルコードに示すように、String属性で文字列化する必要があります。
function App() {
return (
<>
<p>{String(true)}</p>
<p>{String(false)}</p>
<p>{String(undefined)}</p>
<p>{String(null)}</p>
<p>{0}</p>
</>
);
}
export default App;この挙動は、条件付きレンダリングを行う際に便利です。例えば、ある条件がtrueの場合にのみ特定のコンテンツを表示したくて、条件式がfalseやnull、undefinedを返すときに不要な出力をしない時に使用します。以下にサンプルコードを示します。
function App({ user }) {
return (
<>
{user && <p>Welcome, {user}!</p>}
</>
);
}
export default App;上記のサンプルコードでは、変数userがtrue(つまり、nullやundefinedではなく、実際に存在する)と評価される場合のみ、メッセージが表示されます。userがnullやundefinedの場合、<p>タグも何も表示されません。
補足
ゼロ値(0)はfalsyな値ですが、{}構文はfalsyな値を無視するというわけではないので注意してください。
JSXの{}構文の注意点
JSXの{}構文を用いる上での注意点を以下に示します。
- JSXの
{}構文の配下の文字列はクォートで囲むこと
上記の注意点についてこれから説明します。
JSXの{}構文の配下の文字列はクォートで囲むこと
JSXの{}構文内で文字列を使用する場合には、文字列をクォートで囲む必要があります。文字列はシングルクォート'、ダブルクォート"、またはバックティック`(テンプレートリテラルを使う場合)で囲むのが一般的です。
例えば、hogeという文字列を{}構文経由で出力する場合には、以下のように記述します。
<p>{“hoge”}</p><p>{hoge}</p>にすると、hogeは変数として解釈され、その変数が保持している値が表示されます。hogeという名前の変数が定義されていない場合、このコードはエラーを引き起こします('hoge' is not definedというエラーが表示される)。サンプルコードを以下に示します。
function App() {
const hoge = 'hogehoge';
return (
<>
{/* 以下のコードではhogeと出力される */}
<p>{'hoge'}</p>
{/* 以下のコードではhogehogeと出力される */}
<p>{hoge}</p>
</>
);
}
export default App;本記事のまとめ
この記事ではReactの『{}構文』について、以下の内容を説明しました。
- JSXの
{}構文とは - JSXの
{}構文の特徴 - JSXの
{}構文の注意点
お読み頂きありがとうございました。