ITの話をしていると、「システムをマイグレーションする」「データをマイグレーションする」という言葉を耳にすることがあります。
少し難しく聞こえますが、基本的には「システムやデータを別の環境へ移すこと」です。
この記事では、マイグレーションについて、以下の内容を具体例とともにわかりやすく説明します。
- マイグレーションの意味
- 代表的な4種類と具体例
- リプレースとの違い
マイグレーションとは?

マイグレーションとは、既存のシステムやソフトウェア、データなどを、別の環境へ移行することです。
簡単にいうと、「システムやデータの引っ越し」です。
例えば、古いパソコンから新しいパソコンへ買い替えたとき、保存していた写真や書類を新しいパソコンへ移します。このようなデータの引っ越しも、マイグレーションの一例です。
企業のシステムでも、同じように引っ越しを行います。
- 古いサーバーから、新しいサーバーへシステムを移す
- 今まで使っていたソフトから、新しいソフトへ顧客情報を移す
- 社内で動かしていたシステムを、クラウドへ移す
ただし、ファイルをコピーするだけで終わるとは限りません。引っ越し先に合わせて設定やデータの形を調整することもあります。
移した後も、必要な機能やデータを使えるようにすることが大切です。
マイグレーションの主な種類
マイグレーションは、何を移すか、どのように移すかによって呼び方が変わります。ここでは、代表的な4種類を紹介します。
| 種類 | 簡単にいうと |
| データマイグレーション | 保存しているデータの引っ越し |
| サーバーマイグレーション | システムを動かす場所の引っ越し |
| ライブマイグレーション | 仮想マシンを動かしたまま行う引っ越し |
| レガシーマイグレーション | 古いシステムを新しい環境や仕組みへ移すこと |
これらは、組み合わせて行うこともあります。例えば、古いシステムを新しいサーバーへ移す際に、保存しているデータも一緒に移します。
データマイグレーション
データマイグレーションとは、保存されているデータを、別の保存先やシステムへ移行することです。 移行先に合わせて、データの形式を変える場合もあります。
例えば、お店で使っている顧客管理ソフトを新しくする場面を考えてみましょう。
古いソフトには、お客さんの名前、電話番号、購入履歴などが保存されています。新しいソフトでも同じ情報を使えるように引き継ぐ作業が、データマイグレーションです。
ただし、古いソフトと新しいソフトでは、データの受け取り方が違うことがあります。例えば、日付を「2026/10/13」から「2026-10-13」へ変換して取り込む場合があります。
ほかにも、次のような例があります。
- 古い保存装置から、容量の大きい新しい保存装置へ文書を移す
- 商品情報を保存しているデータベースを、別のサーバーへ移す
データベースとは、たくさんの情報を整理して保存し、検索や更新をしやすくする仕組みです。
移行後は、件数や内容を確認し、必要なデータが欠けずに引き継がれているかを確かめます。
サーバーマイグレーション
サーバーマイグレーションとは、現在のサーバーで動いているシステムやデータを、別のサーバー環境へ移行することです。
例えば、会社のWebサイトを動かしているサーバーが古くなったため、新しいサーバーへWebサイトを移すケースです。
ほかにも、次のような移行があります。
- 古いOSのサーバーから、新しいOSのサーバーへ移す
- 社内で管理しているサーバーから、クラウド上のサーバーへ移す
また、自社で設備を用意・管理してシステムを動かす形態を「オンプレミス」といいます。クラウドでは、事業者が提供するサーバーなどをネットワーク経由で利用します。
サーバーを移した後は、Webサイトが表示できるか、ログインやデータの保存ができるかなどを確認します。
ライブマイグレーション
ライブマイグレーションとは、仮想マシンを動かしたまま、別の物理サーバーへ移す技術です。
仮想マシンとは、ソフトウェアによって作られた「コンピューターのように動く環境」です。1台の実物のコンピューターの中で、複数の仮想マシンを動かすこともできます。
ここでいう物理サーバーは、その仮想マシンを動かしている実物のコンピューターです。
例えば、サーバーAを点検するために、そこで動いている仮想マシンをサーバーBへ移す場面を考えてみましょう。
通常、仮想マシンを停止して移すと、その間は中で動いているサービスも利用できなくなります。
ライブマイグレーションでは、仮想マシンが処理している状態を引き継ぎながら移すため、利用者への影響を抑えて、元のサーバーを点検できます。
「無停止の移行」ともいわれますが、切り替え時にごく短い処理の中断が生じることはあります。また、利用する製品やサーバーの構成が、ライブマイグレーションに対応している必要があります。
レガシーマイグレーション
レガシーマイグレーションとは、長年使われてきた古いシステムを、新しい環境や仕組みへ移行することです。
古い技術や構成を引き継ぎながら使われているシステムを「レガシーシステム」と呼びます。
例えば、会社で長年使ってきた販売管理システムがあるとします。今も動いていますが、修正できる担当者が少なかったり、新しい機能を追加しにくかったりすることがあります。
そこで、今までの業務やデータを引き継ぎながら、新しい環境で使えるようにします。
システム全体を作り直す場合もあれば、今の機能をできるだけ残して、動かす環境を変える場合もあります。必ずすべてを新しくするわけではありません。
また、プログラムを書く言語を変更することもあります。例えば、COBOLで作られた請求処理をJavaへ移行するケースです。COBOLとJavaは、どちらもプログラミング言語です。
この場合は、書き方を変えるだけでなく、新しいプログラムでも請求金額などが正しく計算されることを確認します。
マイグレーションとリプレースの違い
マイグレーションは「移すこと」、リプレースは「置き換えること」に着目した言葉です。 リプレースは「リプレイス」と表記されることもあります。
例えば、お店の顧客管理ソフトを新しくする場合で考えてみましょう。
| 比較項目 | マイグレーション | リプレース |
| 着目すること | 今あるものを移行する | 今使っているものを別のものに置き換える |
| 顧客管理ソフトの例 | 顧客情報を新しいソフトへ引き継ぐ | 古いソフトを新しいソフトへ入れ替える |
つまり、ソフトを入れ替える「リプレース」に伴って、顧客情報の「データマイグレーション」を行うことがあります。
この2つは、どちらか一方だけを選ぶものではありません。同じ作業の中に、置き換えと移行の両方が含まれることがあります。
なお、リプレースでもOSやサーバーなどを変更する場合があります。「何を置き換えるのか」「何を移すのか」で考えると、違いを理解しやすくなります。
マイグレーションを実際に行うときは、失敗に備えてバックアップを取り、問題が起きた場合に元の環境へ戻す手順も考えておきます。移行後は、データや機能を正しく使えるか確認することが大切です。
本記事のまとめ
この記事では「マイグレーション」について、以下の内容を説明しました。
- マイグレーションは、システムやデータなどを別の環境へ移すことで、「引っ越し」と考えるとわかりやすくなる。
- 移行する対象や方法によって、データ・サーバー・ライブ・レガシーなどの呼び方がある。
- ライブマイグレーションは、仮想マシンを動かしたまま移し、利用者への影響を抑える技術である。
- マイグレーションは「移すこと」、リプレースは「置き換えること」に着目しており、両方を行う場合もある。
- 移行するときは、バックアップを取り、移行先でもデータや機能を正しく使えるか確認することが大切である。
お読みいただきありがとうございました。