ITネットワークの世界では、IPアドレスの「クラス」や「サブネットマスク」といった言葉がよく登場します。これらは、ネットワークを設計したり管理したりするうえでとても重要な概念です。
この記事では、IPアドレスの「クラス」や「サブネットマスク」について、以下の内容を図を用いて分かりやすく解説します。
- IPアドレスのクラスとは?
- クラスAとは?
- クラスBとは?
- クラスCとは?
- プライベートIPアドレスの範囲
- サブネットマスクによるネットワーク分割
- IPアドレスとサブネットマスクをAND演算するとネットワークアドレスが分かる
- サブネットマスクとCIDRの違い
IPアドレスのクラスとは?

IPアドレスとは、インターネットやローカルネットワーク上でコンピューターを識別するための番号です(例; 192.168.1.19
や 10.0.0.1
など)。住所のようなもので、パソコンやスマホが「誰と通信するか」を決めるために使われます。
IPアドレスは、使うネットワークの規模に応じて「クラスA」「クラスB」「クラスC」に分類されます。
クラスA | クラスB | クラスC | |
アドレス範囲 | 0.0.0.0〜 127.255.255.255 | 128.0.0.0〜 191.255.255.255 | 192.0.0.0〜 223.255.255.255 |
ネットワークアドレス部 | 8ビット | 16ビット | 24ビット |
ホストアドレス部 | 24ビット | 16ビット | 8ビット |
割り当て可能ホスト数 | 2^24−2=16,777,214 台 | 2^16−2=65,534 台 | 2^8−2=254 台 |
対象 | 大規模ネットワーク | 中規模ネットワーク | 小規模ネットワーク |
実際には「クラスD」や「クラスE」もありますが、一般的ではないため、この記事では「クラスA」「クラスB」「クラスC」に絞って解説しています。
クラスAとは?
クラスAのIPアドレスは、ネットワークアドレス部8ビット、ホストアドレス部24ビットで構成されています。クラスAの特徴を以下に示します。
- 先頭ビットが「0」で始まるため、アドレスの範囲は「0.0.0.0 〜 127.255.255.255」となります。
- なお、実際のクラスAの割り当て範囲は「1.0.0.0 〜 126.255.255.255」です。
- 「0.0.0.0 〜 0.255.255.255 の範囲(0.0.0.0/8)」は「未指定アドレス」、「127.0.0.0 〜 127.255.255.255 の範囲(127.0.0.0/8)」は「ループバックアドレス」(localhost、自分自身を指すアドレス)として予約されており、通常のネットワークでは使われないためです。
- ネットワークアドレス部:8ビット
- ホストアドレス部:24ビット
- 一つのネットワーク内で割り当て可能なホストの最大数:2^24 − 2 = 16,777,214 台
割り当て可能なホストの最大数が2台引いている理由
ホスト部が「全て0」のアドレスは、そのホストが属している「ネットワークアドレス」、ホスト部が「全て1」のアドレスは、同じネットワークに属する全てのホストに同一の情報を送信するために使用する「ブロードキャストアドレス」として、使うことになっているため、ホスト部のビット数で本来表される数(2^24)から「-2」した数値が割り当て可能なホストの最大数になります。
クラスBとは?
クラスBのIPアドレスは、ネットワークアドレス部16ビット、ホストアドレス部16ビットで構成されています。クラスBの特徴を以下に示します。
- 先頭ビットが「10」で始まるため、アドレスの範囲は「128.0.0.0 〜 191.255.255.255」となります。
- ネットワークアドレス部:16ビット
- ホストアドレス部:16ビット
- 一つのネットワーク内で割り当て可能なホストの最大数:2^16 − 2 = 65,534 台
クラスCとは?
クラスCのIPアドレスは、ネットワークアドレス部24ビット、ホストアドレス部8ビットで構成されています。クラスCの特徴を以下に示します。
- 先頭ビットが「110」で始まるため、アドレスの範囲は「192.0.0.0 〜 223.255.255.255」となります。
- ネットワークアドレス部:24ビット
- ホストアドレス部:8ビット
- 一つのネットワーク内で割り当て可能なホストの最大数:2^8 − 2 = 254 台
【補足】クラスごとのプライベートIPアドレスの範囲
クラスごとに、企業や家庭内で使えるプライベートIPアドレスの範囲も定められています。これらはインターネットには直接出ず、ルーター内などで使われるIPアドレスです。
クラスA | クラスB | クラスC | |
プライベートIPアドレス範囲 | 10.0.0.0〜 10.255.255.255 | 172.16.0.0〜 172.31.255.255 | 192.168.0.0〜 192.168.255.255 |
例えば、クラスCのアドレス範囲(192.0.0.0 ~ 223.255.255.255)の中には、プライベートIPアドレスとして予約されている範囲(192.168.0.0 ~ 192.168.255.255)があり、この範囲は世界中の企業や家庭内ネットワークで重複して使われています。一方、クラスC内のそれ以外のアドレス範囲は、基本的にグローバルIPアドレスとしてインターネット上で一意に割り当てられ、世界に1つしか存在しない唯一のアドレスとして使われます。ただし、例外として一部の範囲(例:192.0.2.0/24 や 203.0.113.0/24 など)はテスト用やドキュメント用に予約されており、グローバルIPとして使われないこともあります。
サブネットマスクによるネットワーク分割
たとえば「クラスC」は254台までホストを管理できますが、部署やチームごとにネットワークを分けたいときがあります。そこで使われるのが「サブネットマスク」です。
サブネットマスクは、IPアドレスのどこまでがネットワーク部で、どこからがホスト部かを決めるマスク(フィルター)です。
ビット単位で「1」が「ネットワークアドレス部(サブネット部も含む)」、「0」が「ホストアドレス部」を意味しており、IPアドレスの「ネットワークアドレス部」と「ホストアドレス部」をビット値で定義することができます。たとえばクラスCのIPアドレスで、次のようにサブネットマスクを指定した場合、1つのネットワークを62台(2^6 − 2 )ずつの割り当てが行える4つのサブネットに分割することができます。

- 元は24ビットのネットワークアドレス部を、サブネットマスクで26ビットに拡張していることで、拡張した2ビットを小さなネットワーク(サブネット)で表現できる。
- 拡張した2ビットで表せるサブネット数:2^2 = 4サブネット
- 残る6ビット(32 - 26)で表せるホスト数:2^6 − 2 = 62台
- 結果:クラスCのネットワークを「62台×4サブネット」に分割できる!
サブネッティングとは
「サブネッティング」は、ホスト部のビットを一部借りてネットワーク部を拡張し、小さなネットワーク(サブネット)を複数作る技術です。
IPアドレスとサブネットマスクをAND演算するとネットワークアドレスが分かる
IPアドレスとサブネットマスクをビットごとにAND演算することで、そのIPアドレスが属するネットワーク(サブネット)のアドレスを求めることができます。
一例として、以下のIPアドレスとサブネットマスクだとしましょう。
- IPアドレス → 192.168.1.130(2進数: 11000000.10101000.00000001.10000010)
- サブネットマスク → 255.255.255.192(2進数: 11111111.11111111.11111111.11000000)
AND演算すると、以下のようになります。
11000000.10101000.00000001.10000010
AND
11111111.11111111.11111111.11000000
-----------------------------------
11000000.10101000.00000001.10000000 → 192.168.1.128
このIPアドレスが属するネットワーク(サブネット)のアドレスは「192.168.1.128」であることが分かります。
サブネットマスクとCIDRの違い
ここまでで、サブネットマスクを使ってネットワークを分割する方法(サブネッティング)について説明しましたが、もう一つ関連する用語にCIDR(Classless Inter-Domain Routing)というものがあります。CIDRはサブネットマスクをより簡潔に表した記法です。
サブネットマスクとCIDRの違いを以下にまとめます。
サブネットマスク | CIDR | |
表記方法 | 255.255.255.192のように10進数4つで表記 | /26のようにスラッシュ+ビット数で表記 |
意味 | ネットワーク部がどこまでかを10進数で指定 | ネットワーク部のビット数を直接指定 |
使用例 | 255.255.255.192 | /26 |
メリット | 昔から使われており、直感的に理解できる | よりシンプルで柔軟な表現ができる |
たとえば、「サブネットマスク: 255.255.255.192」と「CIDR表記: /26」は同じ意味です。どちらも「ネットワーク部が26ビット、ホスト部が6ビット」という意味を持ちます。もともとIPアドレスはクラス(A/B/C)に基づいて割り当てられていましたが、CIDRはこの「クラス」に依存しない柔軟な割り当て方式です。クラスレスで任意のビット数をネットワーク部に設定できるため、細かく分割してアドレスを効率的に利用できるようになりました。
本記事のまとめ
この記事ではIPアドレスの「クラス」や「サブネットマスク」ついて、以下の内容を説明しました。
- IPアドレスとは
- インターネットやネットワーク内の機器を識別する番号。
- 例:192.168.1.19、10.0.0.1。
- IPアドレスのクラス
- クラスA:1.0.0.0 ~ 126.255.255.255(約1677万台、先頭ビット0)
- クラスB:128.0.0.0 ~ 191.255.255.255(約6.5万台、先頭ビット10)
- クラスC:192.0.0.0 ~ 223.255.255.255(約254台、先頭ビット110)
- ※0.0.0.0/8は未指定用、127.0.0.0/8はループバック用。
- プライベートIPアドレス範囲
- クラスA:10.0.0.0 ~ 10.255.255.255。
- クラスB:172.16.0.0 ~ 172.31.255.255。
- クラスC:192.168.0.0 ~ 192.168.255.255。
- 世界中で重複使用可能、インターネットに直接出せない。
- グローバルIPアドレス
- プライベートIP範囲外はグローバルIP。
- インターネット上で一意に割り当てられ、重複しない。
- サブネットマスク
- IPアドレスをネットワーク部とホスト部に分けるマスク。
- 例:255.255.255.0(/24)、255.255.255.192(/26)。
- CIDR(Classless Inter-Domain Routing)
- サブネットマスクを簡潔に表す記法(例:/26)。
- クラスに依存しない柔軟なアドレス設計が可能。
お読み頂きありがとうございました。