普段インターネットでWebサイトを見るとき、www.example.jpなどのドメイン名を入力しますよね。
でも実際に通信している相手は、192.0.2.1のような数字の並んだIPアドレスです。
このように、人間が覚えやすいドメイン名を、コンピュータが理解できるIPアドレスに変換してくれる仕組みをDNS(Domain Name System)といいます。そして、その中核を担うのが今回紹介するフルサービスリゾルバ(Full Service Resolver)です。
この記事では『フルサービスリゾルバ』について、以下の内容を図を用いてわかりやすく解説します。
- フルサービスリゾルバとは?
- DNSの名前解決の仕組み
フルサービスリゾルバとは?
フルサービスリゾルバとは、スタブリゾルバ(PCやスマホに内蔵されたDNSクライアント)からの名前解決の依頼を受け取り、代わりに他の権威DNSサーバーへ問い合わせを行うサーバーのことです。最終的にIPアドレスを見つけ出し、その結果をスタブリゾルバへ返します。
フルサービスリゾルバは「秘書」のような存在です。ユーザー(あなたのパソコンやスマホ)が「www.example.jpのIPアドレスを知りたい!」と思ったとき、実際にインターネット上の権威DNSサーバーを回って調べてくれるのがフルサービスリゾルバです。つまり、ユーザーが直接問い合わせるのではなく、フルサービスリゾルバが「ルートサーバー → jpの権威DNSサーバー → example.jpの権威DNSサーバー」という流れで順番に問い合わせを行い、最終的な答え(IPアドレス)を持ち帰ってきてくれます。
補足
- フルサービスリゾルバは「キャッシュDNSサーバー」とも呼ばれます。略して「フルリゾルバ」とも呼ばれます。
- 権威DNSサーバーは「DNSコンテンツサーバー」や「権威ネームサーバー」とも呼ばれます。
- 人間が覚えやすいドメイン名とコンピュータが理解できるIPアドレスを変換することを「名前解決」といいます。
DNSの名前解決の仕組み

ここからは、実際にwww.example.jpの名前解決をする流れについて解説します。
スタブリゾルバがフルサービスリゾルバに問い合わせ
ブラウザに「https://www.example.jp」と入力します。
すると、ユーザーのパソコンやスマホなどでは、スタブリゾルバ(DNSクライアント)がまず「このドメイン名(例:www.example.jp)はどのIPアドレスなのか?」を調べようとします。
スタブリゾルバからの問い合わせはフルサービスリゾルバに来ます。
www.example.jpのIPアドレスを教えて!
フルサービスリゾルバがキャッシュを確認
フルサービスリゾルバは、まず自分の中(キャッシュ)をチェックします。
- キャッシュに
www.example.jpのIPアドレスがある → すぐに返答 - キャッシュに
www.example.jpのIPアドレスがない → 他の権威DNSサーバーへ聞きに行く
ここでは、キャッシュにwww.example.jpのIPアドレスがない場合を考えます。ここからが「名前解決の旅」の始まりです。
フルサービスリゾルバが「ルートサーバー」に問い合わせ
まず、フルサービスリゾルバは「ルートサーバー(ルートネームサーバー)」に問い合わせます。
www.example.jpのIPアドレスを教えて!
ルートサーバーはwww.example.jpのIPアドレスを知らないため、代わりに「jpの権威DNSサーバー(jpドメインを管理しているサーバー)」の場所をフルサービスリゾルバに教えてくれます。
jpの権威DNSサーバーに問い合わせて!
補足
ルートサーバーはDNS階層の一番上にあるサーバーです。.jpや.comなどのトップレベルドメイン(TLD)の権威DNSサーバーのIPアドレスを知っています。
フルサービスリゾルバが「jpの権威DNSサーバー」に問い合わせ
次に、フルサービスリゾルバは「jpの権威DNSサーバー」に問い合わせます。
www.example.jpのIPアドレスを教えて!
この「jpの権威DNSサーバー」もwww.example.jpのIPアドレスを知らないため、代わりに「example.jpの権威DNSサーバー(example.jpドメインを管理しているサーバー)」の場所をフルサービスリゾルバに教えてくれます。
example.jpの権威DNSサーバーに問い合わせて!
フルサービスリゾルバが「example.jpの権威DNSサーバー」に問い合わせ
今度は、フルサービスリゾルバは「example.jpの権威DNSサーバー」に問い合わせます。
www.example.jpのIPアドレスを教えて!
「example.jpの権威DNSサーバー」は実際にwww.example.jpのIPアドレスを持っているため、最終的な答え(例:192.0.2.1)を返してくれます。
www.example.jpのIPアドレスは192.0.2.1です!
フルサービスリゾルバが結果をキャッシュして返す
フルサービスリゾルバは取得したIPアドレスをキャッシュ(一定期間保存)します。そして、最初に問い合わせてきたスタブリゾルバ(DNSクライアント)に答えを返します。
www.example.jpのIPアドレスは192.0.2.1です!
次回同じドメイン名を問い合わせられたときは、キャッシュから即座に回答できるため、インターネットの通信がより速くなります。
本記事のまとめ
この記事では、フルサービスリゾルバ(Full Service Resolver)の役割と、実際にwww.example.jpの名前解決がどのように行われるのかを解説しました。
- DNS(Domain Name System)は、ドメイン名とIPアドレスを結びつける仕組み。
- フルサービスリゾルバは、スタブリゾルバの代わりにインターネット上の権威DNSサーバーを順番に問い合わせて、最終的なIPアドレスを見つけ出す。
- フルサービスリゾルバは結果をキャッシュして、次回以降のアクセスを高速化してくれる。
つまり、私たちがWebサイトをスムーズに開けるのは、このフルサービスリゾルバが裏で頑張ってくれているおかげなんです。
お読みいただきありがとうございました。