インターネットを使う上で欠かせないのが「ドメイン」です。
このドメインは世界中で一意である必要があります。しかし、この「ドメイン」がどのように管理され、どんな組織が関わっているのかをご存じでしょうか?
この記事では『ドメイン管理の仕組み』について、以下の内容を図を用いてわかりやすく解説します。
- ドメインの管理は誰が行っているのか?
- ICANNとは?
- レジストリ(Registry)とは?
- レジストラ(Registrar)とは?
- レジストラと指定事業者の違い
- リセラ(Reseller)とは?
- ドメインを購入・登録する流れ
ドメインの管理は誰が行っているのか?

インターネットのドメインは世界中で一意である必要があります。もし同じ名前のドメインが複数存在してしまったら、どのサーバーにつながるのか分からなくなり、インターネットは混乱に陥ります。
そこで、ドメインをグローバルに一元管理する仕組みが作られました。その中心的な役割を担うのがICANN(アイキャン)です。
ICANNとは?
ICANN(アイキャン)は、インターネット上のドメインを全体的に管理・調整している非営利法人です。ICANNは「Internet Corporation for Assigned Names and Numbers」の略で、1998年に設立されました。
ICANNの主な役割を以下に示します。
- ドメイン名システム(DNS)の安定運用を維持する
- DNSはドメイン名(例: google.com)とIPアドレス(例: 142.250.196.14)を対応付ける「インターネットの住所録」のような仕組みです。
- ユーザーがブラウザにgoogle.comを入力すると、DNSがIPアドレスを返し、そのIPアドレスを使って正しいサーバーに接続できるようになります。
- 新しいトップレベルドメイン(TLD)の承認・調整
- 最近は
.shop
や.app
など新しいTLDが次々登場しています。 - これを勝手に作られると混乱するので、ICANNが審査・承認して世界的に調整しています。
- 最近は
また、ICANNはドメインだけでなくIANA(Internet Assigned Numbers Authority)を通じてIPアドレスの割り当ても管理しています。要するに、ICANNは「インターネットの住所録(ドメイン名やIPアドレス)を、世界的に管理・調整している司令塔のような存在」です。
ICANNは直接ccTLD(例:.jpや.us)を管理しているわけではありません。ccTLDは各国や地域のポリシーに基づき、それぞれの国の組織(レジストリ)が管理しています。ICANNはその承認・技術調整を担う立場です。
レジストリ(Registry)とは?
レジストリは、「トップレベルドメイン(TLD)」を直接管理している組織です。TLDごとに必ず1つのレジストリが存在します。
TLDには大きく分けてgTLD(汎用トップレベルドメイン)とccTLD(国別コードトップレベルドメイン)の2種類あり、gTLDはICANNから任命されたレジストリが管理していますが、ccTLDは各国・地域のポリシーに基づいて管理組織(レジストリ)が指定され、そのレジストリが管理しています。
- gTLD(例:
.com
,.net
,.org
)- ICANNから任命されたレジストリが管理しています。
- 例
.com
,.net
→ Verisign(ベリサイン).org
→ Public Interest Registry(PIR)
- ccTLD(例:
.jp
,.us
,.uk
)- 各国・地域のポリシーに基づいて管理組織(レジストリ)が指定されます。ICANNはそれを承認し、技術的な調整を担う立場であり、直接ccTLDを管理しているわけではなく、管理は各国のレジストリが行っています。
- 例
.jp
→ JPRS(日本レジストリサービス)
レジストリの主な役割を以下に示します。
- 登録されたドメイン名のデータベースを管理する
- 世界中で登録されたドメイン名を一覧にまとめ、正確に記録します。
- 例えば「example.com」が誰に登録されているかを一元的に管理する役割です。
- 登録されたドメイン名の情報をDNSに反映する
- 登録されたドメイン名を、実際にインターネット上で使えるようにDNSへ反映します。
- これにより「example.com」と入力すると正しいサーバーにアクセスできるようになります。
- TLDの運用ルールやポリシーを定める
- そのTLDでドメインを登録するための条件やルールを決めます。
- 例えば、
.jp
なら日本に住所がある人や企業に限定する、といった方針を策定します。
つまり、TLDそのものを持っていて管理しているのがレジストリです。
レジストラ(Registrar)とは?
レジストリ(TLDの管理者)は、ドメインを直接ユーザーに販売していません。実際にドメインの販売を行うのは、レジストラとリセラーです。ここでは、レジストラについて解説します。
レジストラは、ユーザーにドメインを販売できる企業であり、レジストリと直接契約を結んでいるのが特徴です。レジストラは契約しているレジストリのデータベースにアクセスする権限を持っているため、ユーザーやリセラーのドメイン登録を代行することができます。いわば、ドメインの販売代理店(登録事業者)の役割を担っています。
なお、ccTLDの「.jp」ドメインについてはgTLDの「レジストラ」に相当する組織を 「指定事業者」と呼んでいます(仕組みはほぼ同じですが、呼び方が異なります)。
複数のレジストラがレジストリと契約しているため、ドメインの販売価格やオプションは、レジストラごとに異なります。そのため、ユーザーは、価格やサービス内容を比較して、自分に合ったレジストラを選べます。
代表的なレジストラの例
- お名前.com
- ムームードメイン
- GoDaddy
- Namecheap
レジストラの主な役割を以下に示します。
- ユーザーからのドメイン申請を受け付ける
- ユーザーが「example.comを登録したい」と申し込む窓口になります。
- レジストリへ情報を伝達し、ドメインを登録する
- ユーザーが申し込んだ内容をレジストリに伝えて、正式に登録を完了させます。
- ドメインの更新やWHOIS情報の管理を行う
- 登録したドメインの有効期限管理や所有者情報(WHOIS)の更新もサポートします
つまり、レジストラは、ユーザーが実際に「ドメインを購入・登録するときの窓口」となる会社です。
レジストラと指定事業者の違い
「レジストラ(Registrar)」と「指定事業者」は似た役割を持ちながらも、厳密には異なる制度の用語です。整理すると以下のようになります。
項目 | レジストラ(Registrar) | 指定事業者 |
---|---|---|
管理元 | ICANN | JPRS(.jpのレジストリ) |
対象 | gTLD(.com, .net, .orgなど) | ccTLD「.jp」 |
認定方法 | ICANNが認定 | JPRSが指定 |
登録経路 | gTLDは必ずICANNが認定したレジストラを通す必要がある | .jpは必ずJPRSが指定した「指定事業者」を通す必要がある |
つまり、gTLD(.com など)を取得する場合は、ICANNに認定されたレジストラを通す必要があり、.jpドメインを取得する場合は、JPRSに指定された指定事業者を通す必要があります。役割自体は「ユーザーにドメインを提供する窓口」として共通していますが、管理している組織と制度の呼び方が異なります。
リセラ(Reseller)とは?
リセラとは、レジストラ(または.jpの場合は指定事業者)からドメインを仕入れて、ユーザーに販売する再販事業者です。リセラは直接レジストリと契約しているわけではなく、あくまでレジストラ(指定事業者)を通してドメインを扱っています。
リセラの特徴を以下に示します。
- 直接レジストリと契約していない
- リセラはレジストラを通してドメインを扱っている。
- レジストラと契約して販売権を持っている
- レジストラから「ドメインを売る権利」を得て、ユーザーに提供している。
- ユーザーとの窓口としてサポートを行うことが多い
- 例:レンタルサーバー会社やWeb制作会社が「ドメイン登録込みのサービス」を提供しているケース。
- → ユーザーは直接レジストラとやりとりする必要がなく、まとめて契約できる。
ドメインを購入・登録する流れ
では、私たちが実際にexample.com
のようなドメインを購入するとき、どんな流れで登録されていくのでしょうか?
以下に、ドメインを購入・登録する流れを示します。
- ユーザーがリセラ(またはレジストラ)のサイトにアクセスする
- 欲しいドメイン名を検索し、空いていれば取得可能です。
- リセラ(またはレジストラ)が申請を受け付ける
- ユーザーがドメインを購入すると、その情報がレジストラに送られます。
- リセラ経由の場合、裏でレジストラが動いています。
- レジストラがレジストリに登録依頼を出す
- レジストラは、レジストリに対して「このドメインをこのユーザーに割り当ててください」と依頼します。
- レジストラは、契約しているレジストリのデータベースにアクセスできる権限を持っているため、登録依頼を実行できます。
- レジストリがドメインをデータベースに登録
- レジストリはそのドメインを公式データベースに登録し、「誰がこのドメインの利用者か」を管理します。
- その情報がDNSに行き渡ることで、インターネット全体で利用可能になります。
- ユーザーにドメインが使える状態で提供される
- 数分〜数時間で、購入したドメインが実際に自分のものとして利用できるようになります。
- Webサーバーやメールサーバーと紐付ければ、すぐにサービスを開始できます。
リセラ(またはレジストラ)は複数の会社がありますが、どこで買っても最終的にレジストリのデータベースに登録されるので、同じ名前を複数の人が取得することはありません。
本記事のまとめ
この記事では『ドメイン管理の仕組み』について、以下の内容を説明しました。
- ICANN:全体の調整役(DNSやIPアドレスの司令塔)
- レジストリ:TLDを直接管理する組織(例:.com → Verisign、.jp → JPRS)
- レジストラ/指定事業者:ユーザーにドメインを販売する窓口
- リセラ:レジストラから仕入れて再販する業者
お読み頂きありがとうございました。