「この処理はアトミックにしたい」「この更新はアトミックですか?」
ITの会話では、このように「アトミック」という言葉が使われることがあります。
アトミック性(原子性)は、「データベースの更新」や「プログラミングで共有データを操作する場面」などで使われる言葉です。
この記事では、「アトミック」について以下の内容をわかりやすく説明します。
- アトミック性の意味
- データベース・プログラミング・Gitでの具体例
- ACID特性との関係
- 会話で「アトミック」が出てきたときの確認ポイント
アトミック性(原子性)とは?

アトミック性(原子性)は、使われる場面によって、次のように説明できます。
- データベースの場合
- 一連の変更を「すべて反映するか、すべて反映しないか」にする性質です。
- 例えば、送金で「引き落としだけが反映され、入金されない」という状態を防ぎます。
- プログラミングで複数の処理が同じデータを操作する場合
- 対象の操作を、ほかの処理から見て分割できない1つの操作として行える性質です。
- 例えば、共有カウンターの値を1増やすときに、読み取りから書き込みまでをひとまとまりとして扱います。
共通するのは、対象となる処理をひとまとまりとして扱うという考え方です。この性質を持つ操作を「アトミックな操作」と呼びます。
データベースでのアトミック性(原子性)

データベースでのアトミック性(原子性)は、一連の変更を「すべて反映するか、すべて反映しないか」にする性質です。
分かりやすい例が、銀行口座間の送金です。
AさんからBさんへ1,000円を送金する場合、次の2つの更新が必要になります。
- Aさんの残高を1,000円減らす
- Bさんの残高を1,000円増やす
ここで、Aさんの残高だけが減り、Bさんの残高が増える前に処理が失敗すると、送金が中途半端な状態になってしまいます。
そこで、2つの更新を同じトランザクションにまとめます。
この場合、変更の結果は次のどちらかになります。
| 結果 | Aさんの残高 | Bさんの残高 |
| 変更を確定する | 1,000円減る | 1,000円増える |
| 変更を取り消す | 変更を反映しない | 変更を反映しない |
変更を確定することを「コミット」、変更を取り消すことを「ロールバック」と呼びます。
途中まで更新していても、トランザクション全体を取り消せば、そのトランザクションによる変更は残りません。
このように、一連の変更を「すべて反映するか、すべて反映しないか」にするのが、トランザクションのアトミック性(原子性)です。
会話で「この2つの更新はアトミックにしたい」と言われたら、この場面では「片方だけが反映される状態を避けたい」という意味だと理解できます。
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プログラミングでのアトミック性(原子性)


共有データを扱うプログラミングでのアトミック性(原子性)は、対象の操作を、ほかの処理から見て分割できない1つの操作として行える性質です。
例えば、共有しているカウンターの値を1増やす操作を考えてみましょう。
単純な操作に見えますが、概念的には次の手順に分けられます。
- 現在の値を読み取る
- 読み取った値に1を足す
- 計算結果を書き込む
この手順がひとまとまりとして保護されていないと、次のようなことが起こり得ます。
| 順番 | 処理A | 処理B |
|---|---|---|
| 1 | 現在の値「10」を読む | |
| 2 | 現在の値「10」を読む | |
| 3 | 「11」を書き込む | |
| 4 | 「11」を書き込む |
2回増やしたので期待する値は「12」ですが、結果は「11」になっています。処理Aと処理Bが同じ値を読み、それぞれ「11」を書き込んでしまったためです。
このような問題を防ぐ方法の1つが、読み取り・計算・書き込みをまとめたアトミックな加算操作です。
両方の処理が同じカウンターに対してアトミックな加算操作で1を足せば、一方の加算結果をもう一方が上書きしてしまうことを防げます。
この例では、片方の加算で「10」から「11」になり、もう片方の加算で「11」から「12」になります。どちらが先に加算しても、結果は「12」です。
トランザクション処理のACID特性の「A」


データベースにおけるアトミック性(原子性)は、トランザクション処理のACID特性の「A」に当たります。
トランザクションとは、データベースで行う1つ以上の処理を、1つのまとまりとして扱う単位です。
ACIDは、トランザクション処理における次の4つの性質の頭文字を取った言葉です。
| 頭文字 | 英語 | 日本語 |
| A | Atomicity | アトミック性(原子性) |
| C | Consistency | 一貫性 |
| I | Isolation | 分離性(独立性) |
| D | Durability | 耐久性(永続性) |
このうちアトミック性(原子性)は、トランザクション処理に含まれる一連の変更を「すべて反映するか、すべて反映しないか」にする性質です。一部の変更だけが反映される状態を防ぎます。
Gitにもアトミックという言葉がある
Gitのgit pushにも、--atomicオプションがあります。
これは、1回のpushで更新対象となる接続先のブランチやタグなどについて、すべて更新するか、エラー時にはどれも更新しないかにするものです。
例えば、2つのブランチをまとめてpushするときに、一方を更新できない場合は、もう一方も更新しません。
ただし、接続先のサーバーがアトミックなpushに対応していない場合、pushは失敗します。
会話で「アトミック」が出てきたら
会話でアトミックの意味をつかむには、「どこからどこまでを1つの操作として扱いたいのか」に注目すると分かりやすくなります。
例えば、次のように確認できます。
- 「片方だけ更新される状態を避けたい、という意味ですか?」
- 「読み取りから書き込みまでを、ひとまとまりにしたいということですか?」
- 「アトミックにする範囲は、この2つの更新ですか?」
「アトミック」という言葉だけで判断せず、対象となる処理と保証される範囲を確認すると、会話の意図を理解しやすくなります。
本記事のまとめ
この記事では「アトミック性(原子性)」について、以下の内容を説明しました。
- データベースの原子性は、一連の変更をすべて反映するか、すべて反映しないかにする性質で、ACID特性の「A」に当たる。
- 共有データを扱うプログラミングでは、対象の操作を、ほかの処理から見て分割できない1つの操作として行える性質を指す。
- Gitの
git push --atomicは、更新対象のブランチやタグなどを、すべて更新するか、エラー時にはどれも更新しないかにする。 - 「アトミック」という言葉が使われたら、対象となる処理と保証される範囲を確認する。
お読みいただきありがとうございました。