システム開発や運用の現場でよく使われる「切り戻し」という言葉。
ITエンジニアでなくても、プロジェクトやシステム更新に関わると耳にする機会があるかもしれません。
でも、
- 切り戻しって具体的に何をするの?
- どんなときに使うの?
- ロールバックとの違いは?
と疑問に思う人も多いと思います。
この記事では、「切り戻し」の意味・使い方・ロールバックとの違いなどを、わかりやすく解説します。
切り戻しとは?
切り戻しとは、「いったん切り替えたシステムや設定を元の状態に戻すこと」を指します。
具体的には、システムの変更・リリース・更新などを行ったあとに、不具合やトラブルが発生した際、変更前の状態に戻すことを指します。

たとえば、次のようなケースは「切り戻し」になります。
| 状況 | 対応 |
|---|---|
| システムアップデートしたが問題が発生した | アップデート前のバージョンに「切り戻す」 |
| 新機能を追加したが問題が発生した | 新機能追加前のバージョンに「切り戻す」 |
さらに、冗長構成(予備システムを用意しておく仕組み)を採用しているシステムでは、「本番機が壊れたので、予備機に切り替えて運用を続けていた。本番機の修理が終わったので、再度、予備機から本来の本番機へ戻すこと」も「切り戻し」と呼ばれます。これはフェイルバック(failback)とも呼ばれます。
なお、本番機が壊れ、予備機に切り替えることをフェイルオーバー(failover)やスイッチオーバー(switchover)と呼びます。フェイルオーバーは障害時に自動で予備機へ切り替わること、スイッチオーバーは手動(または計画的)に予備機へ切り替えることを指します。

「切り戻し」と「ロールバック」の違い
切り戻しとロールバックはどちらも「元の状態に戻す」操作ですが、使われる場面や対象が異なります。
ロールバックは、主にデータベース管理システム(DBMS)やトランザクション処理で使用される用語です。
切り戻しとロールバックの違いを表形式でまとめると以下のようになります。
| 用語 | 主な対象 | 説明 |
| 切り戻し | システム全体 (アプリ・設定・データなど) | 新しいバージョンや設定をリリースした後に、問題が発生した際、旧バージョン(変更前)に戻すこと |
| ロールバック | 主にデータベース | トランザクション処理中にエラーなどが起きた場合、処理を取り消してトランザクション開始前の状態に復旧すること |
つまり、
- 切り戻しはシステム全体を「前のバージョン」に戻す(広い意味)
- ロールバックはデータベースの変更を「処理前」に戻す(狭い意味)
として使い分けられます。
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『ロールバック』については下記の記事で詳しく説明しています。興味のある方は下記のリンクからぜひチェックをしてみてください。 続きを見る
ロールバックとロールフォワードとは?意味や違いをわかりやすく解説!
本記事のまとめ
この記事では『切り戻し』について説明しました。
「切り戻し」は、システム変更後に不具合が発生した場合などに、以前の正常な状態へ戻すための重要な対応手段です。一方、「ロールバック」は主にデータベースで使われる言葉で、トランザクション処理を取り消して元に戻すというより限定的な意味を持ちます。
システム運用や開発の現場では、「いざというときに切り戻せる体制を整えておく」ことが、安定稼働の鍵になります。
お読みいただきありがとうございました。