ソフトウェアやWebサービス、アプリ開発の現場では、「ローカライズ(localization)」という言葉をよく耳にします。
でも、「ローカライズって結局なに?」「翻訳とどう違うの?」「具体的に何をするの?」と思ったことがある方も多いのではないでしょうか?
この記事では、IT分野でよく使われる「ローカライズ」という言葉について、以下の内容をわかりやすく解説します。
- ローカライズとは?
- L10nとは?
- ローカライズの例
- ローカライズと翻訳の違い
- L10nとi18nの違い
ローカライズとは?
ローカライズ(localization)とは、ソフトウェアやアプリ、Webサイトなどの製品を「他の国や地域でも使いやすくするために調整する作業」のことです。
単なる「翻訳(Translation)」とは違い、言葉の意味だけでなく、その国の文化や使い方に合うように調整するのがポイントです。例えば、こんなものを調整します。
- 表記言語(英語→日本語 など)
- 日付や時間のフォーマット(MM/DD/YYYY → YYYY年MM月DD日)
- 時刻の形式(12時間制・24時間制)
- 通貨の表示($100 → 100円)
- カレンダーの形式(西暦・和暦など)
L10nとは?
ローカライズは「L10n(エル・テン・エヌ)」と略されることがあります。これは「Localization」の「L」と「n」の間に10文字あるためです。
Localization
→ L + 10文字 + n
→ L10n
ローカライズの例
ここでは、実際に使われているIT用語のローカライズ例を見てみましょう。
英語 | ローカライズ後(日本語) | 備考 |
---|---|---|
Sign in / Log in | ログイン | 「サインイン」はあまり使われない |
Log out / Sign out | ログアウト | 同上 |
Bug | バグ、不具合 | 状況により「不具合」のほうが丁寧 |
Repository | リポジトリ | 技術者に馴染みあり。「保管場所」と訳すと不自然 |
Fetch | 取得 | fetch API などでは「取得」が一般的 |
Commit | コミット(Git用語) | 意味的には「確定」だが、カタカナの方が自然 |
Issue | 課題、イシュー | 場面によって言い換えが必要 |
このように、「単に訳す」のではなくて「読者が理解しやすい」ように調整するのがローカライズのポイントです。
ローカライズと翻訳の違い
項目 | 翻訳(Translation) | ローカライズ(Localization) |
---|---|---|
定義 | 単語や文章を別の言語に変換すること | 言語だけでなく、文化や習慣に合わせて調整すること |
対象 | 単語や文章の変換 | UI・UX・レイアウト・フォーマットなども含む |
例 | Sign in →「サインイン」 | Sign in →「ログイン」 |
優先度 | 正確性を重視 | 使いやすさ・わかりやすさを重視 |
使用場面 | マニュアル、契約書など | Webサイト、アプリ、ゲーム、システムの画面など |
翻訳が「言葉の変換」が目的なのに対して、ローカライズは「ユーザーにとって自然な表現に整えること」が目的です。
L10nとi18nの違い
ローカライズとよく一緒に登場する言葉に「i18n(アイ・エイティーン・エヌ)」があります。これは「internationalization(国際化)」の略で、先頭の「i」と末尾の「n」の間に18文字あることから、i18nと表記されます。i18n(国際化)は、製品やサービスを多言語対応・多文化対応にできるように設計することを意味します。
- i18n(国際化) → 多言語・多文化対応ができるように、製品を設計・準備すること
- L10n(ローカライズ) → 他の国や地域でも使いやすくするために調整すること
という関係性で、i18nが設計フェーズ、ローカライズが実装・適用フェーズと捉えると理解しやすいです。
よく使われるi18nのライブラリ
開発現場では、i18nの機能を実装するために、便利なライブラリがよく使われています。
ライブラリ名 | 用途 |
---|---|
i18next | JavaScript向けの汎用i18nライブラリ。 ReactやVueなど多くのフレームワークで使える。豊富な機能と拡張性が特徴。 |
ngx-translate | Angular向けの人気i18nライブラリ。 Angular公式の @angular/localize とは別で、柔軟な翻訳ファイル管理が可能。 |
react-i18next | i18next をReactに特化させたラッパーライブラリ。ReactのHooksやコンポーネントに自然に組み込める。 |
本記事のまとめ
この記事では『ローカライズ(localization)』について、以下の内容を説明しました。
- ローカライズとは、翻訳だけでなく、文化・使いやすさまで考えて調整する作業
- IT用語のローカライズでは、「訳す」より「自然な表現にする」ことが大切
- 翻訳(Translation)よりも、ユーザー体験(UX)に重きを置いている
- i18nとL10nはセットで考えると理解しやすい
お読み頂きありがとうございました。